UAEに新規に法人を設立した方や今後設立予定の方で、自社は法人税の対象になるのか、またどういった要件を満たせば法人税が課されるのかについて気になっている方も多いと思います。
既に発表されている法人税法及び細則や閣議決定の内容から、出来るだけわかりやすく要点をまとめて法人税の課税対象者について整理したいと思います。
法人税の課税対象者
法人税の課税対象者は、一定の要件を満たす居住者または非居住者とされています(法人税法第11条2項)。
まず、居住者とは以下のように定義されています(同法第11条3項)。
・フリーゾーンを含む、UAE国内で設立された法人。
・UAE国外で設立されたが、国内で管理されていると認められる法人。
・UAE国内で事業活動を行う個人。
・大臣の提案に基づいて内閣が発行する決定で決定されるその他の人物。
国内で適法な手続きを経て設立された法人に関しては、メインランド(本土)法人やフリーゾーン法人などの会社形態にかかわらず、原則としてそのすべてが法人税の対象になります。例外的に、政府もしくは政府が認めた法人及び団体、もしくは非営利事業や公益法人などは法人税がかからないこともあります。
また国内で事業を行う個人事業主についても、法人税法の対象になり、法人税を納税する必要があります。日本では法人は法人税法、個人は所得税法に従って税額を計算し申告・納税しますが、事業から生じる利益に関しては法人も個人事業主も含めて法人税法の対象になる点が日本と異なります。
次に、非居住者とは以下のように定義されています(同法11条4項)。
・居住者とみなされないが、国内に恒久的施設を有する者。
・居住者とみなされないが、国内源泉所得を有する者。
・その他閣議決定された組織・団体。
居住者とみなされなくても、UAEで法人税を納税しなければならないケースがあります。それは、国内に支店や工場などの恒久的施設などをもつケースや、恒久的施設はないものの、国内源泉所得を得ていると認められる場合があります。恒久的施設や国内源泉所得とは何かという点については、後程説明します。
なお、上記に該当する法人であっても、年間売上高が一定以下の法人(=小規模事業者救済の対象者)や一定の要件を満たすフリーゾーン企業(=適格フリーゾーン・パーソン)などについては、法人税がかからないケースもあります。これについては以下の記事で説明しています。
法人税の納税義務を決める「恒久的施設」とは何か
恒久的施設(Permanent Establishment, PE)とは税務特有の概念であり、特定の定義があるわけではありませんが、一言で言うと「国内で価値を生み出すために必要な一定の場所や人のこと」を言います。
法人税法では、例えば以下のようなものが恒久的施設に該当するものとして列挙されています(法法第14条2項5項)。
一定の場所:国内の固定または恒久的な場所を指す以下のもの。
- 支店
- 営業所
- 工場
- 経営上の意思決定が行われる場所
一定の人:非居住者に代わって国内で事業活動を行う権限を有し、常習的に行使しているもの。
- 継続的に会社の代理として契約を締結する人。
- 会社の許可を得ることなく、契約の変更や交渉を行う権限のある人。
上記に該当するような場所及び人が 国内に存在すると判断される場合は恒久的施設があるものとして、法人税の納税義務が発生することがあります。
恒久的施設は国際税務を考えるに際して非常に重要な概念ですので、しっかり理解したいところです。
また、在外支店などの二重課税が発生し得る施設については、法人税の免除規定があります。
以下の記事でより詳細に解説していますので、確認してみてください。
法人税の納税義務を決める「国内源泉所得」とは何か
国内源泉所得とは、国内に固有の利益の源泉があると認められる所得のことです。
要するに、UAEのおかげで会社が利益を上げることが出来たのであれば、国内で法人税を納税してくださいね、ということです。非居住者が居住者から得た所得は、すべて国内源泉所得とみなされると定めています(法法第13条1項a) 。
法人税法では、以下のものが国内源泉所得として列挙されています(法法第13条2項)。
・国内での商品の販売による収入。
・国内で提供、利用、または恩恵を受けるサービスの提供からの収入。
・契約の全部または一部が国内で履行され、その恩恵を受けている場合に限り、契約から得た収入。
・国内の動産または不動産からの収入。
・居住者の株式または資本の処分による収入。
・国家における知的財産、使用権、パテント収入。
・国もしくは居住者からの利息収入。
・国もしくは居住者の提供する保険料。
上記のような収入を国内で得ている会社は、外国法人などの非居住者であっても、法人税を納税しなければならない可能性があるため、注意する必要があります。
(補足)
法人格や恒久的施設がないにもかかわらず納税をするということになると、具体的にどのような方法で申告・納税を行うのかはまだ明らかになっていません。
外国法人に対して納税を強制することは実務上煩雑ですし、日本のように支払者に対して源泉分離で源泉徴収を行い課税関係を完結させるという方法を取るにしても、UAEの源泉徴収税率は今のところ0%(法法第45条1項)ですので、現行制度上では不可能です。今後は非居住者のうち恒久的施設がない国内源泉所得に対しては、源泉徴収税率を0%から引き上げることで対応するものと思われます。
まとめ
国内法人のみならず、(日本法人を含む)外国法人であっても、恒久的施設や国内源泉所得に該当する場合は、法人税の納税義務があるということが分かっていただけたかと思います。
日本に本社があり、UAEには支店や駐在員事務所のみを置いていたケースにおいても、法人税の対象になるかどうかを検討する必要があります。恒久的施設や国内源泉所得についてどのように考えたらよいのか分からないという意見も非常に多く頂いております。もし疑問な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。
