UAE法人税法の課税所得とは?会計上の利益とどう違う?調整項目について解説

投稿:2023年8月5日更新:2023年8月11日お知らせ , ブログ

UAEでは、法人税は「課税所得の9%」として計算されることはよく知られています。しかし課税所得とは何か、またその計算方法について正確に説明するのは以外に難しいのではないでしょうか。

本記事では課税所得とは何か、どのように計算されるのかについて記載していきたいと思います。

課税所得 (taxable income) とは何か?

課税所得とは、税務上の収益(益金)から税務上の費用(損金)を差し引いた手残りを指します。

課税所得と比較してよく用いられる用語として、(税引前)当期純利益があります。当期純利益はビジネス上最もポピュラーな概念の1つで、一般的に利益というと会計上の当期純利益のことを指すことが多いです。

当期純利益とは、売上から売上原価や販売管理費、利息の支払いなど、あらゆる支払いを差し引いた後に会社に残る利益を指します。

課税所得 = 税務上の収益(益金)から 税務上の費用(損金)を差し引いたもの
当期純利益 = 売上やその他収益から原価、一般管理費、営業外費用を差し引いたもの

これだけ見ると、課税所得と当期純利益は同じものではないかと思う方もいるかもしれません。実際に両者が完全に一致するケースもあります。

しかし課税所得が当期純利益と一致しないこともあります。理由としては、課税所得はあくまで税金の計算に使うものであり、会社の財政状況や経営成績を適切に反映し、投資家の判断のために公表する目的で計算される会計上の利益とは目的が異なるからです。

一般的に、課税所得は当期純利益に比べ、よりコンサバティブに計算される傾向があります。

例えば、固定資産を減損する場合、会計上は投資が回収できないと判断される固定資産は、投資家への情報提供のため先行して減損損失を計上しますが、税務上では減損損失は計上しません。これは税金の計算をする上で、未確定の損失が計上されてしまうと、会社の判断による要素が大きくなり、納税額にを意図的に変える事が出来てしまうからです。

そのため、課税所得を算出する際は、会計上の当期純利益をベースとしつつ、一定の調整を加えます。
会計上の利益と課税所得は目的が違うことにより調整されることで、数値に違いが生じる可能性があります。

実務上は課税所得と当期純利益を個別に算出することは実務上手間がかかるため、まずは会計上の利益を算出し、それをベースに「税務上の調整項目」を加えることで、課税所得を算出することが一般的です。

それでは、法人税法上の税務上の調整項目には、どのようなものがあるかを以下で説明します。

課税所得を計算するために必要な税務上の調整項目

会計上の当期純利益から課税所得を算定するにあたり、税務上調整が必要とされる項目は以下の通りです(法人税法Q&A第80項)。課税所得を計算する際は、下記のような税務上の調整額を会計上の当期純利益に加減算し、算出することになります。

1.未実現利益/損失
2.配当金などの非課税所得
3.組織再編行為
4.税法上認められない控除
5.関連当事者および関連者との取引に関する調整
6.優遇措置または税制上の優遇措置
7.大臣が指定するその他の調整

1.未実現利益/損失
主に為替差損益や固定資産の評価損、減損等から生じる収益性の資産以外から生じた未実現利益については、会計上は費用や損失として取り扱うことがありますが、税務上はこれを損金として取り扱わないこともあります(発生主義と実現主義)。そのような場合は税務上の加算/減算を行う必要があります。

2.配当金などの非課税所得
国内法人から受け取った配当益や、一定の要件を満たす株式を保有している外国法人からの配当益については、会計上の利益にはなりますが、税務上の所得にはなりません。
そのため、受取配当金について税務上の減算が必要になることがあります。

3.組織再編行為
株式を対価とした事業の一部もしくは全部の譲渡や組織再編行為に関しては、当該組織再編行為等から発生する所得を税務上認識しなくてよいことがあります。そのようなケースでは税務上の課税所得を調整する必要があります。

4.税法上認められない控除
・支払利息のうち、特定の要件を満たすものや一定の金額を超えるもの
・交際費のうち一定の金額を超える部分
・政府により認められてない団体に対する寄付金
・罰金や賄賂

上記については会計上費用としたとしても、税務上の損金に計上することは出来ません。
そのため税務上の加算が必要になります。

5.関連当事者および関連者との取引に関する調整
関連当事者との取引については、一般的な取引先と同様に「第三者間価格」で取引される必要があります。
例えば、親会社と子会社という関係性だからといって、市場価格よりも著しく低い金額で取引をすることは利益の意図的な調整につながるため法人税法上認められていません。その場合は第三者間価格で取引を行ったものとみなして、税金を計算しなければなりません。よって税務上の調整を行い、課税所得を再計算する必要があります。

上記で説明したような調整項目を当期純利益に加減算し、課税所得を算出することになります。

まとめ

課税所得と一言といっても、税務上のあらゆる調整項目を考慮した上で、幅広く発生し得る論点について検討する必要があるということをわかっていただけたかと思います。

法人税法の検討事項を全て自社で検討することは難しいと考えている方も多くいらっしゃると思います。
弊社は税法や会計のエキスパートであり、こういった問題・論点を多く取り扱った経験がございますので、もし疑問点や手伝いできることがあれば、お気軽にご相談頂ければと思います。

 このブログを書いた人

ALWASIQ Management Consultants ジャパンデスクの岡本です。
UAECA(アラブ首長国連邦会計士),公認会計士・税理士(日本)。
UAEに進出する日系企業向けに最新の税務情報を発信しています。

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