UAE法人税におけるグローバル・ミニマム課税(OECD、BEPSの柱2)とは?フリーゾーンとの関係について解説

投稿:2023年8月5日更新:2023年8月11日お知らせ , ブログ

先進国が参加するOECD(経済協力開発機構)では、2021年10月、グローバル・ミニマム課税について導入を決定しました。グローバル・ミニマム課税とは、全世界展開をする大企業の多国籍企業に対して、通常の法人税に加えて、追加でグローバル・ミニマム課税がされるというものです。

そこで今日は、UAEの法人税法とグローバルミニマム課税との関係性、またフリーゾーン法人に与える影響について記載します。

グローバル・ミニマム課税はなぜ必要とされるのか?

大企業の多国籍企業は、無形資産などをタックスヘイブン国などの軽課税国に移転することにより、税負担を軽減させてきました。よく例として挙げられるのは、GoogleやApple社が採用していた「ダブルアイリッシュ・ウイズ・ダッチサンドイッチ」と呼ばれるライセンスなどの無形資産を活用するスキームです。

このようなグローバルな租税回避はBEPS問題(外国の低税率に由来した利益移転・課税ベースの浸食)と呼ばれ、問題視されてきました。その対策の一つとしてグローバル・ミニマム課税は導入されることになりました。

今後は本制度の導入により、大企業の多国籍企業については、無形資産がどこにあっても世界的に定められた最低限の税率(OECDモデルによれば『15%』)を納税しなければならなくなります。

UAEにおけるグローバル・ミニマム課税の対象企業と時期

対象企業

企業グループ(一定の多国籍企業グループ等に該当する者に限る)のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち、2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5000万ユーロ(=連結財務諸表の売上高が約1,200億円)を超える企業が対象になります。

導入時期

UAEにおけるグローバル・ミニマム課税の具体的な適用開始時期は、まだ決まっていません。実施時期については、追って詳細な情報が発表される予定です。
UAEで本制度が採用されるまで、多国籍企業は通常のUAE 法人税制度の下で申告・納税を行うことになります。なお、日本では2024年4月1日以降開始の事業年度から適用が開始されます。

フリーゾーン企業とグローバル・ミニマム課税の関係性

フリーゾーン企業のうち、一定の要件を満たす適格フリーゾーン・パーソンについては税制上の優遇があります。すなわち適格フリーゾーン・パーソンの事業活動のうち、適格所得に該当するものは税率が0%に設置されています。このようなフリーゾーンに対する優遇措置とグローバル・ミニマム課税はどのように関係するのでしょうか。

これについて、法人税法上に明確な規定はありませんが、政府が公表している法人税に関するQ&A118項では、

「大規模な多国籍グループの一部である適格フリーゾーン企業は、グローバル・ミニマム課税がUAEの法人税制度に組み込まれた後、異なる法人税の税率が適用されると予想されています」

と記載がありますので、まずは適格フリーゾーン・パーソンとして法人税の課税の計算を行った後で、グローバル・ミニマム課税に関する検討が再度なされるものと考えられています。

まとめ

今回のグローバル・ミニマム課税の導入は、OECD加盟国において同時的に導入予定であることから、UAEのみならず全世界で協調して導入されるということを認識する必要があります。

当社はUAEのみならず、日本や米国、カナダ、パキスタンにオフィスや提携先を持つ国際会計事務所です。各支店・パートナー専門家と連携しながら、最適なソリューションを提供させて頂きます。グローバル・ミニマム課税に対する対応の要否の検討や、現段階で準備できることはしておきたいなど、なにかご相談がございましたらお気軽にご連絡ください。

 このブログを書いた人

ALWASIQ Management Consultants ジャパンデスクの岡本です。
UAECA(アラブ首長国連邦会計士),公認会計士・税理士(日本)。
UAEに進出する日系企業向けに最新の税務情報を発信しています。

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