UAEで適法に設立された法人については、メインランド法人・フリーゾーン法人に関わらず原則として課税所得に対して9%の法人税を納税する義務があります。
しかし、政策上の観点から法人税を課すべきでない場合や、法人税を課してしまうと不合理な結果になる法人・団体に対しては、法人税が免除されます(もしくは申請によって法人税が免除されます)。
本日は、法人税が免除される具体的なケースについて解説していきたいと思います。
【ケース1】法律で定められている法人及び団体
以下のような法人及び団体は、法律で法人税が免除されることが定められています(法人税法第4条1項)。
- UAE連邦政府、首長国政府、およびその部局、当局、その他の公的機関
- 義務付けられた活動を行う完全政府所有の会社で、閣議決定で決定された団体
- UAEの天然資源の採掘に従事する企業および関連する非採掘活動で、一定の条件を満たした後に首長国レベルの課税対象となる企業
- 閣議決定に記載された適格公益法人
- 所定の条件を満たす投資ファンド
- 所定の条件を満たす公的・私的年金・社会保障基金団体
公益性の高い事業や、国として認可され、もしくは国として実施すべき事業活動については、税金を課さないようにしているためであると考えられます。
【ケース2】非居住者のうち、UAE国内に恒久的施設を持たず、かつUAEに国内源泉所得も発生していない組織
UAE国内の居住者に該当せず、国内に特段の固有の施設も持っておらず、かつUAEに起因する国内源泉所得が発生していないと判断される組織や所得については課税されません。
これは、UAEではなく、他国の税制の範囲内で課税されるべきと考えられるためです。
非居住者とは、以下のいずれの定義にも該当しない者をさします(法人税法第11条2項)。
- フリーゾーンを含む、国内法に基づいて設立され、承認された法人。
- 外国管轄の適用法に基づいて法人が設立されたが、UAE国内で管理されている法人。
- UAE国内で事業活動を行う自然人。
- 大臣の提案に基づいて内閣が発行する決定で決定されるその他の人物。
恒久的施設とは、以下のものを指します(法人税法第14条1項)。
- 非居住者の事業またはその一部が行われる州内に固定または恒久的な場所がある場合。
- 非居住者に代わって州内で事業または事業活動を行う権限を有する者。
恒久的施設の例示としては、以下のようなものが該当します(法人税法第14条2項)。
- ビジネスの遂行に必要な経営上の意思決定が実質的に行われる場所。
- 支店
- オフィス
- 工場
- ワークショップ
- 土地、建物、その他の不動産
- 再生可能または再生不可能な天然資源を探査するための設備または構造物。
- 鉱山、油井またはガス井、採石場、または天然資源を採掘するその他の場所
- 建築現場、建設プロジェクト、または組立または設置の場所、それらに関連する監督活動。
- 常習的に非居住者に代わって契約を締結する者。
国内源泉所得には以下のようなものが含まれます(法人税法第13条2項)。
- UAE国内の商品の販売による収入。
- UAE国内で提供、利用、または恩恵を受けるサービスの提供からの収入。
- 契約の全部または一部がUAE国内で履行され、またはその恩恵を受けている場合に限り、契約から得た収入。
- UAE国内の動産または不動産からの収入。
- 居住者の株式または資本の処分による収入。
- 国家における知的財産または無形財産の使用または使用権、ま使用許可の付与から得られる収入。
- 所定の条件を満たす利息。
- 所定の条件を満たす保険料。
以上のようにそれぞれ定義は複雑ではありますが、国内に法人を有しておらず、恒久的施設もなく、UAE国内で発生したと認められない所得に対しては、法人税はかかりません。逆に言うと、国内に法人を有していなかった場合でも、恒久的施設があると認定された場合は、UAEで法人税が課される可能性がある点に留意が必要です。
【ケース3】適格フリーゾーン・パーソンのうち、適格所得に該当するもの
各種法令を遵守した適格なフリーゾーンにおいて「フリーゾーン間の取引が行われた場合」「製品製造などの適格活動に関する取引が行われた場合」については、当該取引から発生する所得は国内所得とみなされず、UAEの法人税は課されません。
適格フリーゾーン・パーソン(Qualifying Freezone Person)とは、以下の条件をすべて満たすフリーゾーン法人のことを指します(法人税法第18条1項)。
- UAE国内で経済的実態を有していること。
- 内閣が指定する適格所得を得ているもの。
- 適格フリーゾーン・パーソンとなる権利を放棄していないこと。
- 独立企業間価格や移転価格税制などの法令に準拠したフリーゾーン法人であること。
適格所得(Qualifying income)とは以下のものを指します。
- 適格フリーゾーン・パーソンと取引を行う場合の所得。
- 非適格フリーゾーン・パーソンとの取引のうち、適格活動から得られる所得。
適格活動(Qualifying activity)とは、以下のものを指します。
- 商品または原材料の製造および加工
- 株式その他の有価証券の保有
- 船舶の所有および運航
- 再保険およびファンドマネジメント
- 本社から関連当事者に対するファイナンシャル・サービス
- 航空機、ロジスティクス、および物流サービスの融資およびリース
- 一定の条件下における指定区域内または指定区域からの商品の流通
【ケース4】小規模事業者救済制度の対象者
年間売上高が300万AED(約1億2000万円)以下の企業および個人は、この救済制度の恩恵を受けることができ、法人税を納税する義務が免除されます。
この制度は、2023年6月1日以降に開始する会計年度に適用され、2026年12月31日までに終了する会計期間までは適用されることになっています。
UAEに存在する会社の多くは中小企業であり、突然法人税を課してしまうと経済に急速なブレーキがかかってしまうことを懸念し、一定の配慮を行ったためものと思われます。この制度は、3.で記載した適格フリーゾーン・パーソンや多国籍企業グループの構成メンバーには適用されません。
【ケース5】清算手続き中の企業
清算手続き中または清算を終了した事業は、UAE法人税の納税義務が免除されます。ただし、清算手続きが開始された日から20営業日以内に連邦税務当局に届出書を提出する必要があります(2023年閣議決定 第105号)。
まとめ
法人税制が開始し、原則として全ての企業が法人税の申告納税に備え準備をする必要がありますが、一定の条件を満たす会社については、法人税が免除されることがあるとお分かりいただけたかと思います。
法人税が免除される法人であっても、法人税の申告は必要である法人形態もあるため一概に何も対応が不要であるということではないという点は注意が必要です。
法人税の免除に該当するかどうかが不明な方や、法人税の免除を受けるために申請を行いたい方など、本件に関して何か疑問点やご相談がある方は、お気軽に当会計事務所までお問い合わせください。
