UAE法人税ってなに?いつから適用?具体的なスケジュールを把握しよう

投稿:2023年8月5日更新:2023年8月11日お知らせ , ブログ

タックスフリーの国として世界中から富を集めてきたUAE(アラブ首長国連邦)ですが、ついに2023年6月1日から法人税が導入されました。これにより、今後UAEで設立予定の会社だけではなく、既存の法人も法人税の対象になります。

法人税の施行に伴い、具体的に今後どのような対応が必要か気になる方も多いと思いますので、できるだけ簡潔に法人税の概要が理解できるよう、この記事を執筆しました。

法人税適用の背景

UAEでは、所得税や法人税を含め、一定の業種を除いて税金を課してきませんでした。これは国としての税金を低く抑え、税制に魅力に感じた外資系の企業を誘致し、経済を活発化し、自国を魅力化することであらゆる国から富裕層を含む移民を受け入れたいという政策によるものだったと思われます。そういった政策が功を奏し、UAE(特にドバイ)は世界の金融センターとしての地位を確立しました。また、観光大国として非常に多くの旅行者が訪れるようになりました。

しかし同時に、UAEのようなタックス・ヘイブン(税金が無いか、他国に比べて著しく低い国)を悪用する企業や富裕層も出現しました。UAEに利益を移すことで、税金の高い自国では税金が掛からないようにして、税金のかからないUAEに利益を移転し、租税回避を行うという手法が急増しました。これによって主に先進国を中心に資産が海外に流出することになりました。

こういった背景を受け、OECD(経済協力開発機構)は過度な租税回避行為を防止すべく、国際課税ルールを見直し、各国税務当局が協調して対処することを目的としたBEPSプロジェクトを立ち上げました。
UAEに対しても世界的な税制の基準に合わせるべきだという意見に基づき、法人税の導入を要求しました。

UAEも国として成熟していくにつれ、税収の確保の観点から税制の導入も必要な段階になったという経緯もあり、2023年6月からついに法人税を導入するに至りました。

UAE法人税で適用される税率

法人税法によると、企業の課税所得(taxable income)が375,000AEDを超えた場合に、その超えた金額の9%が法人税として課税されます。375,000AEDを越えなかった場合は、その課税所得に対しては税金がかかりません。

これが原則の考え方ですが、例外もいくつかあります。

例えば、小規模事業者救済という特例があります。これは、会計期間の収益(売上高)が3,000,000AEDを超えない事業者については、法人税の申告や納税の実務上の負担軽減のため、法人税率は0%となります。これは2023年6月1日から2026年12月31日までの特例になっています。以下の記事で説明しています。

また、一定の要件を満たすフリーゾーン企業(適格フリーゾーン・パーソン)についても特例があります。
適格フリーゾーン・パーソンのうち、適格活動もしくはフリーゾーン企業と行った取引等については、その取引から得た所得については法人税率が0%となります。以下の記事で説明しています。

法人税申告までのスケジュール

法人税法は2023年6月1日から施行されました。しかし、厳密に6月1日から開始されるかというとそうではなく、6月1日以降から始まる会計期間が最初の適用初年度となります。

例えば日本企業は3月末決算で4月1日が事業年度開始日の会社が多いですが、その場合、法人税の適用初年度は2024年4月1日から始まる会計期間となります。

よって、会計期間が1年間の会社の場合、2024年4月1日から2025年3月31日までが法人税が適用される最初の会計期間となります。さらに、法人税の申告や納税は、会計期間の末尾から9ヶ月が期限となっていますので、2025年12月31日が法人税の申告及び納税の最終期限となります。

実際の法人税の申告及び納税まで十分な準備期間に余裕があるようにも思えますが、実際は適用初年度である2024年4月1日の会計年度が始まる前に準備すべきことが多くありますので、注意が必要です。

法人税適用初年度までに行っておくこと

全く何も準備をせず法人税の開始年度を迎えることは出来ません。
まず第一に、法人税の事前登録が必要です。これはFTAウェブサイトから登録することが必要になるため、まずは忘れずに登録しておきましょう。

第二に、これまで自社の会計帳簿を作っていない場合は、最低でも法人税の開始期間の前年度は会計帳簿及び財務諸表を作っておく必要があります。

財務諸表とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書などから構成される、会社の財政状態や経営成績を表す資料になります。

もし仮に2024年4月1日が開始年度だった場合、その日から会社の帳簿を適切に行うためには、その時点での資産や負債の状態が確定していなければなりません。すなわち、適用初年度の前日(決算日)の2024年3月31日の時点で、財務諸表が出来ていなければ、それ以降の数値も作れないということです。

具体的には、銀行口座残高や現金残高のみならず、会社が保有する固定資産(車や備品、設備など)、売掛債権、借入金の残高をしっかり把握しておく必要になります。

こういった手続きは法人税の適用初年度までにすべて行っておかなければなりません。そしてUAEで採用される会計基準である国際財務報告基準(IFRS)に基づき行われる必要があります。

最後に、自社がどのような要件を満たさなければならない企業であるのかを明確にしておく必要があります。

自社が小規模事業者救済の対象者なのか、適格フリーゾーン・パーソンなのか、多国籍企業に該当する企業なのかによって該当する規制が大きく変わります。移転価格税制の文章化が義務づけられている会社の場合、早めに準備をしておくに越したことはありません。

まとめ

記事を執筆した2023年8月時点においては、まだ法人税の適用初年度まで十分な準備時間があるものの、それに向けた準備も少しずつ進めていかなければならないことはご理解いただけたかと思います。

何から始めたらよいか分からない、また経理担当者がおらず出来る体制が整っていないという方もいらっしゃると思います。我々は税務専門家として、法人税の登録代行や法人税の適用までのお手伝いさせていただくことが可能ですので、お悩みの方はぜひ当社までご相談ください。

 このブログを書いた人

ALWASIQ Management Consultants ジャパンデスクの岡本です。
UAECA(アラブ首長国連邦会計士),公認会計士・税理士(日本)。
UAEに進出する日系企業向けに最新の税務情報を発信しています。

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